2025年度路線価、和歌山県の厳しい現実と全国的な潮流を徹底解説!――相続税評価への影響と今後の見通し ~前半~
路線価について前半と後半に分けて解説いたします。
この度、2025年度の路線価が発表されました。相続税評価の基礎となる路線価は、不動産を所有されている皆様にとって非常に重要な指標です。
今年はどのような動きがあったのか、特に地元和歌山県下の状況を中心に、全国的な傾向、そして今後の見通しについて、専門家の視点から詳しく解説してまいります。
路線価とは?改めてその重要性を確認
路線価とは、国税庁が毎年7月1日に公表する、道路に面した宅地の1平方メートルあたりの評価額です。
主に相続税や贈与税の算定に用いられ、公示地価の8割程度の水準が目安とされています。ご自身の所有されている土地の評価額を把握することは、将来の相続税額をシミュレーションする上で不可欠です。
2025年度路線価、全国的には「二極化」の傾向がより鮮明に
今年の全国的な路線価の動向を見てみると、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越え、回復基調にある地域が増えている一方で、依然として厳しい状況が続く地域との「二極化」がより鮮明になったと言えるでしょう。
特に、三大都市圏や地方中核都市の駅前商業地、利便性の高い住宅地などでは、地価の上昇を背景に路線価も堅調な伸びを見せています。都市再開発やインバウンド需要の回復、さらには共働き世帯の増加による職住近接ニーズの高まりが、これらの地域の路線価を押し上げている要因と考えられます。
一方で、人口減少や高齢化が深刻な地方の過疎地域、あるいはアクセスが不便な郊外などでは、地価の下落が続き、路線価も横ばい、あるいは下落傾向にある地域が見受けられます。これは、需要の減少や空き家問題の深刻化が主な背景にあると分析できます。
和歌山県下の路線価動向:県平均は33年連続の下落、上昇はごく一部の地域に限定
さて、私どもが専門とする和歌山県下の2025年度路線価はどうだったでしょうか。
残念ながら、和歌山県全体の平均路線価は33年連続の下落となり、全国ワーストクラスの下落率を示しています。これは、県全体の地価が長期的に厳しい状況にあることを明確に示しています。
和歌山市内においては、JR和歌山駅前など中心部の商業地や一部の利便性の高い住宅地で堅調な上昇が見られるものの、全体を底上げするほどの影響力はありません。特に、紀の川よりも北側の地域では、今回の発表で全ての宅地が「倍率地域」へと移行しました。 これは、路線価が設定されておらず、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を算出する地域であることを意味します。
実質的には、路線価が下落し、個別の路線価を設定するほどの地価水準ではないと判断されたことを示唆しており、このエリアにおいては非常にネガティブな動向と言わざるを得ません。利便性の低下や人口減少の影響が顕著に表れていると考えられます。
和歌山県下全体で見ると、路線価が上昇しているのはごく一部の自治体に限定されています。確認できる範囲では、観光地として人気の高い白浜町の一部エリアや、田辺市の一部エリアなどで上昇が見られます。例えば、田辺市では前年比で上昇した地点もあると報じられています。これらは、観光需要の回復や、地域独自の活性化策が功を奏していると見られます。
一方で、紀北地域の山間部、紀南地域の過疎化が進む農村部、さらには海南市、新宮市、湯浅町などの多くの地域では、依然として路線価は横ばい、あるいは下落傾向が継続しています。 これは、インバウンド需要の回復が特定の観光地に集中していること、そして県内全体での人口減少と高齢化が依然として深刻な課題であることが大きな要因として挙げられます。
後半では、和歌山県における今後の路線価の見通しについて解説します。